マンションや集合住宅、オフィスなどの床施工で採用されることの多い”置き床工法”。
この工法では、床仕上げ材の下地として使われる”捨て張り”が重要な役割を果たしています。
本記事では、置き床における捨て張りの構造やメリット、施工手順、さらには注意点まで、詳しく解説していきます。
置き床の基本構造と捨て張りの位置付け
置き床工法とは、鉄筋コンクリート製の床スラブの上に支持脚を立て、その上にパーティクルボードなどを設置し、最終的にフローリングなどの化粧床を張る二重床構造のことを指します。
捨て張りとは、この化粧床を施工する前に床下地材として合板などを一層設置する工法です。
捨て張りが果たす主な役割
- 床材の安定性向上:フローリング材の施工面が平坦になり、歪みやきしみが起きにくくなります。
- 防音性能の向上:下地合板が音や振動を吸収することで、階下への音漏れを軽減できます。
- 施工のしやすさ:床がフラットに整うため、床暖房パネルなどの設備設置にも適しています。
このように、捨て張りは仕上げ材の品質と性能を担保するために欠かせない工程といえます。
捨て張りの施工手順と具体的な流れ
ここでは、根太工法における捨て張りの基本的な施工手順について紹介します。
根太組みから捨て張りまでの流れ
- 根太の施工
- 水平を取りながら、所定の間隔で根太を配置します。
- 防振ゴムなどを使い、衝撃音や振動を抑制する工夫も行われます。
- 下地合板(捨て張り材)の取り付け
- 根太の上に12mm〜15mm程度の合板を張ります。
- 釘と接着剤を併用して、しっかりと固定します。
- フローリング材の施工
- 下地合板の上に、接着剤と釘でフローリングを固定していきます。
- 長手方向の小曽根には、約30cm間隔で45度の角度にフロアー釘を打ち込み、最後にポンチで頭を沈めます。
このように段階を踏んだ丁寧な施工が、快適で長持ちする床を実現します。
捨て張り施工のメリットを深堀り
歩行感が良くなる
捨て張りを行うことで床面が安定し、足音の響きがやわらかくなります。家族やオフィス環境など、静かな空間を求める方には非常に有効です。
無垢材にも最適
湿度による伸縮がある無垢フローリングには、下地の安定性が重要です。捨て張りによって施工の精度が上がり、板の浮きやきしみが出にくくなります。
設備との相性が良い
床暖房や床下配線などの設置も、捨て張りによって床面がフラットになることで、施工がしやすくなります。
捨て張りを行う際の注意点
捨て張りには多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。
下地の精度が仕上がりを左右する
捨て張りをしても、根太や支持脚の設置が不正確だと床のレベルが狂ってしまいます。特に精度を求められる床暖房などと併用する場合には注意が必要です。
高さ確保が必要
合板を一層張るため、床の仕上げ高さがその分上がります。ドアの下端や既存の建具との取り合いも事前に確認しておきましょう。
コストと工期
直貼りに比べて、材料費・施工費ともにコストがかかり、施工日数も増えます。予算やスケジュールに余裕を持って計画することが重要です。
捨て張りが不要なケースもある?
なお、すべてのフローリング施工において捨て張りが必要というわけではありません。
直貼り専用のフローリング材であれば、捨て張りを省略できることもあります。
ただし、その場合でも床下地のレベルや強度をしっかりと確認する必要があります。
まとめ:捨て張りは高品質な床づくりの要
置き床における捨て張りは、見た目には見えにくい部分ながらも、快適性・防音性・耐久性といった点において非常に重要な役割を果たします。
長く安心して使える床を目指すのであれば、捨て張りを検討してみる価値は十分にあるといえるでしょう。
施工時には、使用する合板の種類や厚み、施工精度にこだわり、信頼できる業者に依頼することをおすすめします。