推定L等級LL45と現場実測LL45では誤解を生む!床衝撃音低減性能「⊿L等級」とは?

   階下などに響く音

Q. 「LL45/LH50といった記号・数値は何を表しているのでしょうか?」

これらは、JISに基づいた特定の音源から発する床衝撃音が上階から下階へどれくらいの音の大きさで聞こえるかを表す等級です。LL及びLHは、それぞれ軽量床衝撃源及び重量床衝撃源に対する遮音等級を表し、数値が小さいほど音が小さく聞こえることを意味します。L等級には実現場で遮音測定して得られる「空間性能」の意味合いと、二重床や直張りフロア等の性能を評価するための「推定L等級」の意味あいがあり、単位が同じであるために「推定L等級LL45 = 現場実測LL45」といった誤解を生じさせていました。※推定L等級は、現場での性能を補償するものではありません。

遮音等級と生活実感の比較

遮音等級 日本建築学会適用等級 人の移動音、物の落下音など 人の走り回り、飛び跳ねなど
軽量床衝撃音 重量床衝撃音 LL LH
L40 特級 特級 ほとんど聞こえない 微かに聞こえるが遠くから聞こえる感じ
L45 1級 小さく聞こえる 聞こえるが意識することはあまりない
L50 2級 1級 聞こえる 小さく聞こえる
L55 2級 発生音が気になる 聞こえる
L60 3級 3級 発生音がかなり気になる よく聞こえる

日本建築学会適用等級の意味

適用等級 遮音性能の水準 性能水準の説明
特級 遮音性能上特に優れている 特別に高い性能が要求
された場合の性能水準
1級 遮音性能上優れている 建築学会が推奨する
好ましい性能水準
2級 遮音性能上標準である 一般的な性能水準
3級 遮音性能上やや劣る やむを得ない場合に
許容される性能水準

軽量床衝撃源軽量床衝撃源(Light-Weight Floor Impact Source)
スプーンやペンなどの硬く小さい物を落とした時に近い音を発生させます。LLという記号で表します。

重量床衝撃源重量床衝撃源(Heavy-Weight Floor Impact Source)
子供が飛んだり跳ねたりするなどの重く柔らかいものが発生させる音に近い音を発生させます。LHという記号で表します。

Q. 「カタログに掲載されている推定L等級LL45のシステムを採用すれば、現場でもLL45が出ますか?」

推定L等級とは、公的試験機関の残響室で行った試験結果から現場性能を推定した「推定空間性能(推定L等級)」です。実現場では、スラブの厚さや部屋の形状、大きさ、二重天井の有無など二重床以外の様々な要素が音性能に影響しますので保証値とは成り得ません。また、推定L等級の試験体の施工条件に明確な規定がなく、際根太・巾木といった壁際の取り合いなどが再現されていないため現場で際根太・巾木をどのよう施工するかで現場性能が大きく変わってしまう問題点があり、新しい⊿L等級による表記に移行しています。

推定L等級

推定L等級

RCスラブ約10~15㎡の推定データ コンクリート床板素面(RC厚さ150mm)の床衝撃音レベル計算値[引用:㈶建材試験センター]
推定スラブ性能 オクターブ帯域中心周波数
63Hz 125Hz 250Hz 500Hz 1kHz 2kHz 4kHz
軽量床衝撃音レベル 60dB 67dB 68dB 70dB 71dB 72dB 68dB
重量床衝撃音レベル 75dB 66dB 58dB 47dB 37dB 35dB 33dB

プレフロアーEシリーズの各システムの床衝撃音レベル推定L等級は、現場におけるコンクリート床板素面(RC厚150mm)、梁区画面積約15㎡の床衝撃音レベルを、日本建築学会編:建物の遮音設計資料(1.インピーダンス法に基づく床衝撃音レベル実用的予測手法、2.インピーダンス法による予測と計算例)に基づいて算出されたもの(上記表)から各システムの床衝撃音レベル低減量を差し引いた推定値です。実際の現場における性能は諸条件によって異なってきます。
試験室
残響室又は壁式構造実験室
スラブ厚
RC150mm又はRC200mm
評価の対象範囲
室中央部の一般断面性能まで
試験体施工条件
各メーカーがバラバラに設定・試験
表記方法
各試験所が設定した一般的スラブ性能(※上記表参照)の数値へ低減量を組み合わせてのLL・LH表記。RC150mm時でのLL・LH表記や、RC200mm時でのLL・LH表記が混在。LL又はLHだけの表記を行う事例もあり。
推定L等級

Q. 「⊿L等級とは何ですか?」

⊿L等級(デルタ エル等級)とは、二重床などが床衝撃音をどれほど低減するかを表す新しい等級です。2008年3月に学識者と関係諸団体との合同委員会によって作成された「床材の床衝撃音低減性能の表現方法に関する検討委員会報告書」(平成20年3月㈶日本建築総合試験所)に基づいた「床部材(二重床・直張りフロア等)」の評価方法です。旧来の推定L等級と異なり、試験体の施工方法が定められ壁際の取り合いが再現されるようになりました。

⊿L等級

⊿L等級

軽量床衝撃音レベル低減性能の等級(⊿LL等級)
表記する等級 軽量床衝撃音レベル低減量の下限値(⊿LL等級)
125Hz 250Hz 500Hz 1kHz 2kHz
⊿LL-5 15dB 24dB 30dB 34dB 36dB
⊿LL-4 10dB 19dB 25dB 29dB 31dB
⊿LL-3 5dB 14dB 20dB 24dB 26dB
⊿LL-2 0dB 9dB 15dB 19dB 21dB
⊿LL-1 -5dB 4dB 10dB 14dB 16dB
重量床衝撃音レベル低減性能の等級(⊿LH等級)
表記する等級 重量床衝撃音レベル低減量の下限値(⊿LH等級)
63Hz 125Hz 250Hz 500Hz
⊿LH-4 5dB -5dB -8dB -8dB
⊿LH-3 0dB -5dB -8dB -8dB
⊿LH-2 -5dB -10dB -10dB -10dB
⊿LH-1 -10dB -10dB -10dB -10dB

試験室
壁式構造実験室
スラブ厚
RC200mm
評価の対象範囲
室周辺の壁際の端部納まり仕様まで(巾木、際根太が含まれる)
標準試験体施工条件
(a)仕上げ高さ:120mm~150mm
(b)壁際納まり:一般壁納まりの沈み対策の仕様を四周に再現
(c)巾木:木質巾木(浮かし2mm以内)又は、軟質ヒレ付き巾木(接触)
(d)床仕上げ材:巾木の前面より2mm以上奥まで施工
表記方法
(a)~(d)の規定を満たした試験体に対して「標準試験体」として⊿LL等級と⊿LH等級の両方を表記。規定を満たさない場合、「特定試験体」として、等級末尾にSを付記して区別する。
⊿L等級

Q. 「現在設計中のマンションの居室をLL45にしたい場合、⊿L等級いくつの商品を使ったら良いのだろうか?」

⊿L等級は、二重床がどれほど音を小さくできるかの低減量のランク付けです。そのため、対象の居室をLL45にできるかどうかを判断するには、その居室のスラブ素面状態での遮音性能が分からなくてはなりません。しかし、建築前の段階で遮音測定をすることは不可能です。
そこで、推定計算という手法を活用します。現在ではコンクリートスラブの諸条件から遮音性能を推定する計算手法として「インピーダンス法」等といった計算方法が編み出され活用されています。

インピーダンス2009による推定値計算例

入力条件:RCスラブ200mm、梁区画面積55㎡、居室寸法16㎡、梁・部屋位置、他
中心周波数(Hz) 63 125 250 500 1000 2000
軽量床衝撃音レベル 62.0dB 64.0dB 66.0dB 67.0dB 68.0dB
L49 L58 L66 L70 L72
重量床衝撃音レベル 74.8dB 59.5dB 49.2dB 41.8dB
L52 L47 L43.2 L42

推定計算の概要推定計算の結果、設定条件の居室はスラブ素面状態でLL70-LH50の遮音等級となることが推測されました。この居室に対し、LL45-LH50を求めるには上記のスラブ素面の推定結果に対し、⊿L等級の低減量を差し引くことでプレフロアー施工後の性能が推定されます。

スラブ素面推定値からの居室性能推定値の求め方

居室性能推定値
以上の計算結果の通り、「⊿LL(Ⅱ)3-⊿LH(Ⅱ)3のシステムを採用すればLL45-LL50となりそうだ」となります。スラブ素面の推定計算については、ご相談ください。
※⊿LL(Ⅱ)3-⊿LH(Ⅱ)3の床衝撃音レベル低減量は上記の表を参照していますが、各システムの低減量を活用することで、より精度の高い推定計算結果が期待できます。
※居室の遮音性能は二重床の他、二重天井、GL壁等様々な要素が影響します。推定計算値には余裕を持たせることをお勧めします。
※推定計算は予測値であり、その性能を実際の建物で保証するものではありません。目安としてお考えください。

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