毎日歩くたびに視界に入る細かい傷や黒ずみ、「ゴシゴシしても取れない」と嘆いたまま絨毯で隠して放置してしまうことありませんか?
そこで、改善してくれるのがフローリングの表面を削るサンディングという再生工法です。
貼り替えの2/3もしくは半分のコストで“ほぼ新築”の光沢と質感を取り戻してくれます。
本記事ではサンディングの目的、DIY手順、費用比較、失敗しないコツを解説。
読み終えるころにはご自宅の床が具体的にどう蘇るのか、はっきりイメージできるはずです。
サンディングとは何か
サンディングはフローリング表面を0.3〜1 mmほど研磨し、傷・汚れ・古い塗膜を丸ごと削り落として真新しい木肌を露出させる工程です。
とくに無垢材は層が厚く、削った分だけ“生まれたて”の木目が現れます。
研磨後にオイルやウレタンで再塗装すれば、汚れにくさと耐久性もグレードアップ。
張り替えと違い廃材が出ないため環境負荷を抑えられる点も見逃せません。
サンディングがもたらす三つのメリット
傷・汚れ・シミを一掃して美観を回復
経年で染み込んだ黒ずみや表面割れは、洗剤でも落ちないことが多いものです。
サンディングは汚染層ごと削り取るため、化学薬品を使わずに“素材そのものの色”を取り戻せます。
再塗装の色を変えれば、インテリアの印象を一段階アップグレードすることも可能です。
無垢材の価値を最大化
木は表層ほど紫外線で劣化が進んでいます。
0.8 mm削っただけで導管が再び艶を放ち、節や年輪の表情が鮮明に。
無垢材が本来持つ吸放湿機能も復活し、夏はベタつきにくく冬はひんやり感が和らぐといった体感的なメリットも得られます。
貼り替えより高いコストパフォーマンス
下表は12畳(約20 m²)のリビングで貼り替えとサンディングを比べた概算です。
工法 | 材料・工賃総額 | 工期 | 廃材量 | 備考 |
---|---|---|---|---|
張り替え(オーク無垢15 mm) | 42万〜55万円 | 5〜7日 | 約400 kg | 既存床の撤去・処分含む |
サンディング+水性ウレタン3層 | 18万〜24万円 | 2〜3日 | ほぼゼロ | 夜間でも騒音が小さい機材選択可 |
廃材の処分費、巾木交換、家具移動回数などを含めるとサンディングは総額で半額以下になるケースが多く、賃貸オーナーにも人気です。
DIYで行うサンディング手順
準備する道具と安全装備
サンディングマシン(手押しタイプまたはランダムサンダー)
サンドペーパー粗目(#60〜#80)・中目(#120)・細目(#240)
集塵機/家庭用掃除機+細ノズル
マスク・防塵ゴーグル・耳栓・手袋
養生用マスカー・ブルーシート
床面と室内のセッティング
家具を全て移動し、壁際から50 cmの高さまで養生を貼ります。
掃除機で隙間の砂粒を除去し、表面ワックスが残っている場合ははく離剤で落としてから乾燥させます。
ここを怠ると紙やすりが目詰まりし、研磨ムラの原因になるので要注意です。
粗研磨で傷と塗膜を削り切る
粗目ペーパーを装着し、木目方向に一定速度で往復。止めたままにすると凹みになるため常に動かし続けましょう。
研磨粉が濃い褐色から淡色に変わったら古塗膜の除去完了のサインです。
中研磨で段差を均し、細研磨で仕上げる
番手を上げるごとに研磨方向を15度ずつ変えると、前工程の筋が残りません。
最後は#240でサラサラになるまで磨き、手の平でなぞって繊維の引っ掛かりがなければOK。
再塗装で保護膜を再構築
吸込みの大きい無垢材では、オイル下塗り+水性ウレタン2回コートが定番。
1回目を薄く浸透させ、2回目で光沢と耐摩耗膜を確保するとムラになりにくいです。
塗布はコテバケをS字に動かし、最後に木目へ直線でならすと塗厚が一定になります。
DIYでありがちな失敗と対策
トラブル | 原因 | リカバリー |
---|---|---|
研磨ムラ | 一点に荷重が集中 | 低重心で両手保持し、ストロークを一定に戻す |
研磨跡の“洗濯板” | 粗目→細目の番手飛ばし | 中目(#120)を必ず挟み斜め方向で研磨し直す |
白濁 | 湿度75%以上で塗装 | サーキュレータと除湿器で湿度50%に下げ再塗布 |
塗膜のベタつき | 重ね塗り間隔が短い | 24時間乾燥させ表面を#400で軽く研磨してから再塗装 |
プロへ依頼した場合の費用とメリット
項目 | 研磨のみ | 研磨+水性ウレタン3層 | 研磨+UV硬化 |
---|---|---|---|
価格目安 | 5,000〜6,000円/㎡ | 8,000〜10,000円/㎡ | 12,000〜15,000円/㎡ |
工期 | 1日 | 2〜3日 | 1日(即日歩行可) |
粉塵 | 集塵98%以上(ダストフリー機) | 同左 | 同左+無臭硬化 |
仕上がり保証 | 1年 | 2〜3年 | 5年 |
プロは研磨深度を微調整しながら研磨していきます。また、粉塵をほぼ回収するため、家具やカーテンを残したままでも施工可能。
日常業務を止められないホテルや商業施設ではダストフリーサンディングが採用され、夜間作業で翌朝から通常利用という事例もあります。
複合フローリングは削れる?
複合(突き板)フローリングは表層厚が0.3 mm前後と薄いため、サンディングは基本的に一回限り。
以下の判定チャートで可否を確認しましょう。
表層材厚 | サンディング可否 | 推奨深度 |
---|---|---|
0.2 mm以下 | 不可 | 張り替え推奨 |
0.3〜0.5 mm | △ | 0.1 mm以内で軽研磨 |
0.6 mm以上 | ◎ | 0.2 mm以内で中研磨 |
0.2 mm未満のシートフローリングは木目プリント層のため、削ると基材が露出してしまう点に注意が必要です。
サンディング前後のメンテナンスで寿命が決まる
再塗装後1週間はラグやビニールマットを敷かず、通気性を確保してください。
以降は椅子脚にフェルトパッドを貼り、月に一度固く絞った雑巾で水拭きするだけでOK。
年1回だけ同系統のメンテナンスオイルを薄塗りすれば、次回研磨までの周期が5年から10年へと延長できます。
“削る”選択で床と暮らしをアップデート
フローリング表面を削るサンディングは、傷と汚れをリセットして無垢材のよさを最大限に引き出すリフォーム手法。
DIYなら工具レンタル代込みで数千円/㎡、プロに任せても貼り替えより圧倒的にコスパがいい。
粉塵や番手選びといったコツを押さえれば、仕上がりは想像以上に滑らかで、踏み心地もワンランク上に感じられます。
床が輝くと部屋全体の印象が生まれ変わり、毎日の掃除も楽しくなるもの。
張り替えを決める前に、まずは“削る”選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。