「体育館に入るたび、床が滑りにくいようになったと感じる」「以前は段差でつまずく心配があったが、今はスムーズに移動できて安心」。
そんな利用者の声を聞くたびに、上越市が進める総合体育館の改修工事の意義を実感します。
老朽化した床は衝撃吸収性や摩擦係数が低下し、競技パフォーマンスだけでなく転倒事故のリスクを高めます。
さらに、段差があると車いす利用者や小さな子どもにとって大きな障壁となり、トイレ設備が十分でなければ安心して長時間利用することも難しくなります。
上越市では、アリーナだけでなく柔剣道場、卓球場、身体障害者体育館の床にウレタン塗装を施し、段差解消や多目的トイレの改修までを一体的に行うことで、誰もが安全に、快適にスポーツを楽しめる環境を整えています。
本記事では、床材の特性や改修内容の詳細、工事の流れから維持管理のポイントまでを網羅的に解説し、上越市総合体育館を末永く活用するための知見をお届けします。
上越市総合体育館改修の目的と背景
上越市総合体育館は長年にわたり地域のスポーツ振興や学校体育、地域イベントの拠点として活用されてきました。
しかし床材の摩耗や塗膜の剥離、段差の発生といった老朽化現象が進行し、利用者からは滑りやすさやつまずきへの不安が寄せられていました。
そこで市はスポーツ振興くじ助成金などを活用し、照明のLED化と並行して床面全域の耐久性と安全性を高めるウレタン塗装を採用。
さらに館内の段差を解消するスロープ設置や、車いす利用者にも配慮した多目的トイレの新設を含むバリアフリー改修を実施することで、すべての市民が安心して利用できる体育館づくりを目指しています。
主な改修内容の詳細
改修工事はアリーナ、柔剣道場・卓球場、身体障害者体育館の各エリアにおいて、床仕上げをウレタン塗装に統一したうえで段差解消とトイレ改修を同時に行う大規模プロジェクトです。
ウレタン塗装は厚膜の樹脂層を形成し、耐摩耗性・耐衝撃性・防滑性を兼ね備える仕上げ工法で、従来のワックス仕上げに比べてメンテナンス周期が長く、日々の清掃による摩耗にも強いという特徴があります。
段差解消は、主要出入口や観客席への動線にスロープを設けて法令で定める勾配をクリアすると同時に、滑り止め加工を施したことで安全性をさらに向上させました。
トイレ改修では車いす対応の広い個室を設置し、手すりの位置や洗面台の高さを見直すことでユニバーサルデザインに配慮した空間としています。
ウレタン塗装の施工工程とメリット
ウレタン塗装施工は、まず既存塗膜をサンディンし、表面の凹凸をならします。
ひび割れや小さな穴は補修し、ウレタン樹脂塗料を数回に分けて塗り重ねます。
仕上げには耐摩耗性トップコートを施し、適切な乾燥・硬化期間を確保することで、厚さ数ミリの連続塗膜が出来上がります。
この工法により、新築時と同様の床性能に近づき、摩擦や荷重をかけても剥がれにくい強靱な床面になります。
段差解消とバリアフリー化のポイント
館内への出入口や観客席へのアクセスを容易にするため、床仕上げの高さ調整を行って新設スロープを設置しました。
スロープの勾配は高齢者や車いす利用者でも負担にならない1/12以下に設計し、転倒防止のため滑り止めシートを併用。
スロープと既存床の継ぎ目は目地をなくすことで段差ゼロを実現し、移動のしやすさを向上させました。
さらにトイレ改修においては、車いす用個室を従来のサイズより50%広く設計し、可動式手すりや着座時に負担の少ない便座高さとすることで、すべての利用者が安心して使用できるよう配慮しています。
床材種類とウレタン塗装の比較表
体育館の主流の床材にはフローリング(木製床)、長尺シート(塩化ビニール製)の2種類があります。
上越市総合体育館では耐摩耗性・メンテナンス性を重視してウレタン塗装を選択しましたが、他素材との比較は以下の通りです。
床材種類 | 耐用年数の目安 | クッション性 | 防滑性 | メンテナンス頻度 | 初期導入コスト |
---|---|---|---|---|---|
木製フローリング | 約20〜30年 | 高い | 中程度 | 2年~5年に1回の再塗装 | 中程度 |
長尺シート(ビニール系) | 約10〜20年 | 中程度 | 高い | 月1回の拭き掃除 | 高め |
ウレタン塗装は床仕上げを一体化させるため汚れが入りにくく、耐薬品性・防滑性に優れる一方で、塗膜の厚みを確保するための施工手間がかかります。
しかし初期導入コストを抑えつつ、長期的に見るとメンテナンスサイクルの長さがコスト削減につながるため、公共施設では採用例が増えています。
工事の流れと利用者・管理者の調整ポイント
上越市総合体育館の改修は①現地調査→②設計・仕様決定→③予算確定→④施工業者選定→⑤現地施工→⑥完了検査→⑦引き渡しという一連の流れで進行しています。
特に利用者や管理者との調整においては、改修期間中の代替利用施設を確保し、競技団体や学校関係者への説明会を開催。
工期を夏季休館期間に合わせることで利用停止の影響を最小限に抑え、施工中の安全確保として立ち入り禁止区域の明示や防塵・防音対策を徹底しました。
管理者側からは進捗報告書を週次で提出し、イレギュラー対応やスケジュール変更にも即時対応できるコミュニケーション体制を構築しました。
完了後の維持管理とメンテナンス計画
改修が完了したら、日々の清掃と定期点検が床寿命を左右します。
まず毎日の終業後にはほこりや砂利は箒やモップで取り除き、週に一度は中性洗剤で拭き掃除を実施。
ウレタン塗膜の剥離やひび割れ、滑り止め性の低下がないかを月1回点検シートでチェックし、小さな剥がれは速やかに樹脂パッチで補修します。
2~5年ごとには専門業者による再塗装を計画し、年間メンテナンス予算を確保することで大規模剥離や全面再施工を長期的に先延ばしにできます。
まとめ
上越市総合体育館の床改修工事は、ウレタン塗装による耐摩耗性・防滑性の強化、段差解消によるバリアフリー化、多目的トイレの新設をワンパッケージで実現した先進的なプロジェクトです。
LED照明化と合わせた省エネ化や助成金活用による予算効率化も図られ、市民が安全・快適にスポーツを楽しめる場として再生されました。
今後は日常清掃や定期点検を継続し、2~5年ごとの再塗装計画を着実に実行することで、次回改修まで長期間にわたり安定した機能を維持できます。
上越市総合体育館は、利用者と管理者が一体となって取り組む維持管理こそが、真の「持続可能なスポーツ環境」を支える鍵であることを示しています。