今日は床研磨塗装だっ!
今日の現場は、床研磨塗装。
サンディングマシンを「ウィーン」と唸らせ、古い塗膜や汚れ、細かい傷を数ミリ削ってリセットし、新しい塗料で生まれ変わらせる仕事だ。
張り替えと違って廃材がほとんど出ず、工期も短いのが魅力。
表面を削った瞬間、くすんだ木肌がパッと明るく蘇るあの光景は、何度見ても胸が高鳴る。
木目が生き返り、ツヤが戻る瞬間こそ、この仕事の醍醐味だ。
父が始めた昭和の仕事
実はこの仕事、うちの父が昭和40年代から始めたものだ。
もともと体育器具メーカーに勤めていた父に、「体育館の床もやってくれないか」というオファーが舞い込み、そこからスポーツフロア事業がスタート。
バレーやバスケの試合が行われる床、剣道場の舞台、学校の廊下まで、父は全国を飛び回り、木の床を磨き上げてきた。
当時はまだ珍しかった床研磨塗装。
父がまさにその黎明期を担っていた。
昔の現場は大変だった
当時の塗料は、今みたいに低臭・安全仕様じゃない。
匂いはツンと鼻を突き、目はシパシパ、乾燥にも時間がかかる。
塗りムラも出やすく、真夏の体育館なんて灼熱地獄だったそうだ。
父は「塗ってる途中で汗が床に落ちないよう必死だった」と笑っていたが、その実、過酷な現場だったはずだ。
今では想像できないが、昭和の職人はそういう環境で技術を磨いてきた。
父の時代の職人の施工姿はまるでバイク乗り
父が若い頃の写真を引っ張り出すと、そこには腰を低く落とし、工具を操る姿が。
まるでオートバイを運転しているかのような姿。
粉塵の中でマシンを操る背中には、無骨で頼もしい職人のオーラが漂っていた。
作業着は木粉まみれ、髪の毛まで真っ白。
それでも目だけは鋭く、仕上がりを見据えている。
あれこそ昭和の現場人の顔だ。
漂う昭和の空気
古い現場写真を見ると、半袖短パンで作業している父や仲間の姿。
首にはタオル。
現代の安全管理基準では完全アウトだが、それが許されていた時代だった。
現場の空気は今より緩やかで、人との距離も近い。
笑い声と工具音が混ざり合い、現場全体が一つのチームのように動いていた。
夏休みの工事音
自分が子どもの頃、夏休みの学校は特別だった。
外ではプールで友達の歓声、校舎の中では体育館から「ガガガガ…」というマシン音。
木粉と汗と夏の匂いが混ざるあの独特な空気感。
蝉の声に混じるマシンの唸りは、まさに夏休みのBGMだった。
母校で見た父の姿
小学校の夏休み、母校で父が仕事をしていると聞いて、プールの休憩中に覗きに行ったことがある。
そこには汗だくで研磨機を押す父の姿。
普段家で見る父とは違う、職人の顔だった。
「うちの父ちゃん、すげぇな」と思った瞬間は今でも忘れない。
昔は現場も自由だった
今では現場は安全第一、子どもが入るなんてもってのほか。
でもあの頃は、現場の隅で作業を眺めても怒られなかった。
職人さんが「お、見にきたのか!」と笑ってくれたり、使わない端材をくれたり。
そんな自由さも昭和の現場の魅力だった。
憧れの背中
父の背中は、ただ床を磨いているだけじゃなく、空間を作り上げているように見えた。
その姿を見て育ったから、自分も自然とこの道を選んだのだと思う。
マシンの音、木粉の匂い、完成後の床の輝き…全部が自分の原点だ。
本題の研磨塗装へ!
思い出話はさておき、現場開始。
サンディングマシンを床に当てると、「ウィーン」という低い音と共に、古い塗膜がみるみる削れていく。
光の下で木肌が鮮やかに蘇る瞬間、まるで床が息を吹き返すようだ。
これが研磨塗装の魔法だ。
研磨塗装の手順
①研磨:サンディングマシンで古い塗膜・汚れ・傷を除去
②清掃:粉塵を隅々まで吸い取り
③塗装:ウレタン塗料を均一に塗布(体育館なら途中でライン)
④乾燥:塗料をしっかり乾かす
シンプルな流れだが、研磨の均一さや塗料の伸ばし方は経験者の腕が物を言う。
費用の目安
費用は床の状態や塗料の種類、広さで変わるが、張り替えより安く済む。
廃材もほとんど出ないから環境負荷も軽い。
工期が短いのも嬉しいポイントだ。
DIYは要注意
広い面積や高級無垢材では、DIYは危険。
研磨マシンは一瞬で床に深い傷をつけてしまう可能性がある。
特にムラなく研ぐには熟練の感覚が必要。
安全かつ美しい仕上がりを求めるなら、やはりプロの仕事だ。
研磨塗装のメリット
- 美観回復:新品同様の輝き
- 耐久性UP:水や傷に強くなる
- 浅い傷は研磨で消える
- 廃材削減で環境にも◎
- 短期間&低コスト
床にとっての“若返り治療”ともいえる研磨塗装。今日もまた、この技術で床に命を吹き込んできた。