「年が明ける前に、床をピカピカにしたいんです!」
この季節になると増えるのが、年末の大掃除とかリフォームついでに床のご依頼。
特に親戚や友人が集まるお正月前は、「このくすんだ床じゃ迎えられない!」と気合十分なお客様が多い。
現場に到着すると、確かに長年の暮らしの跡がしっかり刻まれた床。
日々の歩行、家具の移動、食事のこぼし…
そのすべてが積み重なった“歴史”だ。
でも、私の手にかかれば、この床もまだまだ現役復帰できる。
まずは床の状態を見極める!
施工の前に絶対外せないのが、床材の確認。
パッと見ただけでは無垢なのか複合材なのか、はたまたプリントタイプなのか分からないことも多い。
ここを間違えると、施工後にトラブルが待っている。
床の断面や木目の出方、反射の仕方までじっくり観察。
まるで医者が患者の症状を診るように、「どこまで削れるのか」「どんな塗料が合うのか」を見極める。
この見極めこそ、仕上がりの運命を決める第一歩だ。
未来を見据えた工法選び
床の種類だけじゃない。
お客様が今後どう床を使っていくのか、それも大事な判断材料だ。
ペットが走り回る家なら滑りにくさ重視、小さなお子様がいるなら安全性の塗料を使うのが優先、来客の多い家なら耐久性重視…。
使い方次第で、ベストな工法も変わってくる。
単に今を直すだけじゃなく、これからの生活に寄り添った提案をするのが、床やの腕の見せどころなのだ。
今回は研磨塗装で勝負!
今回の診断結果は…研磨塗装!
もちろん張替えや上張りを提案することもあるが、この床はまだまだ削って再生できる状態だった。
お客様の予算や希望を踏まえて、「新品みたいに甦らせる」プランを選択。
研磨塗装は、表面の汚れや傷を削り落とし、新しい塗装で保護する王道の工法。これで見た目も機能も一気にリフレッシュできる。
床材の性格に合わせろ!
工法の成否は床材の性格次第。
硬くて粘りのある木は削るとツヤが出やすく、柔らかい木は足触りが優しいが傷がつきやすい。
樹種によって削るスピードも、使うサンドペーパーの番手も変わる。
まさに木と会話するような作業だ。
素材の個性を見極めて、それに合ったアプローチを選ぶことで、仕上がりは何倍も美しくなる。
削れば分かる、床の素顔
いよいよ研磨開始。
サンダーが回転し、黒ずんだ表面が薄く剥がれるたびに、下から明るい白木が顔を出す。
この瞬間は何度やっても気持ちがいい。
まるで長年かけて積もった埃を一気に吹き飛ばすような爽快感。
お客様も隣で「うわ、全然違うねー!」と声を掛けてくれる。
こうして眠っていた床本来の表情が蘇る瞬間は、職人としての醍醐味だ。
見惚れるほどの美しさ
削り終わった床は、塗装前でも息を呑むほど美しい。
木目はくっきり、手触りはスベスベ。
光が当たると、まるで新築の時のような輝きを放つ。
お客様も思わず靴下を脱いで足を滑らせ、「気持ちいい…」と笑顔に。
この時点でもう達成感はあるが、ここからさらに塗装で磨きをかける。
塗料選びは性格診断
次のステップは塗料選び。
オイル仕上げで木の呼吸を生かすか、ウレタンでガッチリ保護するか、それともワックスで艶を足すか…。
それぞれにメリットとデメリットがある。
使用環境や好みに合わせて選択肢を提示し、「どれもおすすめですが、生活スタイルに合うものを選びましょう」とアドバイスする。
住まいに溶け込む塗装を
塗料の種類だけでなく、家全体の雰囲気にも合わせたい。
ナチュラルテイストの家ならマット仕上げ、モダンな家なら光沢ありも映える。
色もほんのり着色するだけで、床の印象はガラリと変わる。
お客様とカタログを見ながら、「こっちの色だと家具が映えますね」と未来の空間を想像していく時間は、打ち合わせの中でも楽しい瞬間だ。
艶で変わる、部屋の顔
光沢のある床はホテルライクで高級感、艶なしは落ち着きと温もりを演出。
色をつければ、さらにオリジナル感が増す。
それぞれの選択が部屋全体の雰囲気を左右するから、ここは妥協できない。
職人としても、この最終的な“顔つくり”には特にこだわりを持っている。
塗装で仕上げ、いざ完成!
塗装を終えて乾燥させれば、いよいよ完成。
光を浴びて輝く床は、まるで蘇ったかのよう。
お客様が「うちじゃないみたい!」と感嘆の声をあげる瞬間は、職人として最高の達成感だ。
年末年始、新しい床で迎えるお正月…その笑顔を見て、「やってよかった」と心から思える床にしていきたい。