ダンススタジオの床材にはいろいろな種類がありますが、それぞれに特徴があります。
この記事では、巷でよく見かけるダンスの床材であるフローリング、スポーツシート、リノリウム(塩ビシート)、この3つの特徴やメリット・デメリットを詳しく紹介し、最適な床材を選ぶ際のポイントを探ります。
ダンススタジオにおける床材選びの重要性と、どの床材が最適かを考えてみましょう。
地雷系床材だけは絶対に選びたくないあなたは、ぜひ参考にしてください。
フローリング・スポーツシート・リノリウム
それぞれの特徴・メリット・デメリット
フローリング
古くからダンスの床として使われているのがフローリングです。それだけダンサーからの信頼があり、ダンスに適しているとも言えます。ナラ(オーク)、サクラ、メープル、など。
メリット
・フローリング、特に無垢フローリングは自然素材で体に優しく、独特の温かみと味わい深さがある
・床の表面が滑らかで、ダンスシューズとの相性が良い
・素足でも気持ちがいい(冬はほんのり温かみがあり、夏は爽やか)
・古くなれば研磨により、既存床が新しく趣のあるスタジオになる
デメリット
・水分は大敵
水などをこぼしたら、すぐに拭き取りましょう。
・音が下層階に伝わりやすい
下の階に何かテナントが入っている場合は、配慮が必要です。
ただし、フローリングでも床下地で遮音することはできます。
下地を以下のような構造で施工することにより、下層階に響かなくなります。
①ベニアを使う
②遮音シート(アスファルト系でできている)を使う
③支持脚のゴムを柔らかいものにする
④断熱材を使う
断熱材を使うと、冬でもあたたかいというメリットもあります。
スポーツシート
スポーツシートとは、ウレタン系の弾力性のあるシートです。
※この写真はスポーティーな印象を受けますが、コートラインのあるなし、または床材以外の部分の素材次第で、雰囲気はいかようにもできますので、ご安心ください。
メリット
・フローリングと比較すると、柔らかいので、足や膝に優しく、足腰の故障の軽減ができる
練習量が多いダンサーにとっては、体への負担が少なく疲れにくい床であることは重要です。踊りやすく長時間でも快適に踊ることができれば、誰からも愛されるスタジオになるでしょう。
・転倒時の安全性が高い
ダンスで転倒することは少ないかもしれませんが、衝撃吸収性を備えているので、失敗するとけがを負うような技でも安心して練習できます。
・遮音性が高い
発泡層の機能により、音の発生を抑制します。
・施工性が良い
長尺シートなので、施工性がよく工期の短縮が可能です。
・カラーバリエーションが豊富
ナチュラルカラーから、鮮やかな色まで取り揃えています。明るい雰囲気はもちろん、作りたい空間の雰囲気に合わせてお好きな色を選べます。
デメリット
(ダンススタジオの場合は体育館のようにコートラインをひくことは珍しいとは思うので、必要ない方は読み飛ばしてください。)
・長尺シートなので、補修しようとすると、大きい範囲の補修になってしまう
・ラインを引いたら消すことはできない
もしもラインを消したい場合は上からまわりと同じ色を塗るしか方法がありません。無理に消すときれいに見えなくなります。
リノリウム
リノリウムは、亜麻仁油や石灰石、木粉、ロジン(松脂)など天然素材から作られています。
ですが、ダンス用の「リノリウム(リノリューム)」と呼ばれている床材は、床材の天然のリノリウムではなく、外観がリノリウムによく似た塩ビシートを使うのが主流です。塩化ビニルを原料にしています。ダンスの床材などの記事やサイトで書かれているリノリウムはこちらのシートのことを指していることが多いので、お間違いなく。〇〇フロア、〇〇リュームなどと呼ばれています。
バイクのことを「HONDA(ホンダ)」と呼んだり、ティッシュのことを「Kleenex(クリネックス)」と呼ぶ国があるのと同じようなものです。それだけリノリウムという床材が知られるようになったということですね。
メリット
・弾力性がある
適度な柔軟性があるので、足に優しい
・サイズの自由度が高い
固定サイズと、切り売りの2種類があります。1m以上であれば10cm単位で購入できるものもあります。
デメリット
・すべりやすい商品がある
防滑性があり滑りにくく、JISの安全基準を満たしていると謳っています。審査方法は、水をたらしてゴム靴を履いてそれがどのぐらい滑るかという基準です。実際に踊るときの環境とは大きく違うので、注意が必要です!全てのダンス用リノリウムがすべりやすいというわけではないので、よく調べてから導入することをおすすめします。くれぐれも、地雷系床材を選ばないようにしてください。
・使っていると、表面がだんだん削れてくるなど、木材と比べると劣化が早い
スポーツシートとリノリウム(シート)を比較
スポーツシートは体育館などにも使われる素材であるため、リノリウムの塩ビシートと比較すると高価です。その分、機能性は高いので、物は良いと言えるでしょう。
どちらもシートなので、フローリングと比較すると安く施工できます。
価格を比較
フローリング
種類 | 価格 |
無垢フローリング | ¥10,000/㎡~ |
複合フローリング | ¥5,000/㎡~ |
一般的な価格相場ですが、選ぶ種類や木材のグレードによって価格が異なります。
大きくわけると、「針葉樹」と「広葉樹」の2つがあります。広葉樹は木が成長するまでに時間がかかるため、針葉樹に比べて価格が高めです。
スポーツシート
※最新の価格はお問い合わせください。
レックスコート
規格 | ロール長 | 価格 |
幅1.8m×厚さ4.5mm | 20m | ¥7,200/㎡・¥12,960/m |
幅1.8m×厚さ6.5mm | 11m/15m | ¥9,300/㎡・¥16,740/m |
幅1.8m×厚さ8.0mm | 11m | ¥13,200/㎡・¥23,760/m |
※レックスコートはロール販売です
レイジャー4.0
規格 | ロール長 | 価格 |
幅1.8m 厚さ4.0mm | 16m | ¥5,800/㎡・¥10,440/m |
※レイジャー4.0はロール販売です
タラフレックススポーツフロア
規格 | 価格 |
幅1.5m×厚さ6.2mm×長さ20m | ¥14,000/㎡ |
幅1.5m×厚さ7.5mm×長さ20m | ¥17,000/㎡ |
幅1.5m×厚さ10.5mm×長さ20m | ¥19,000/㎡ |
リノリウム
マーティリューム
規格 | 価格 |
幅1.82m×厚2mm | ¥8,000/m~ |
では結局、ダンススタジオにおすすめの床材は何なのか?
答えは好みです。
好みと言っては語弊があるかもしれませんが、「どんな風にしたいか、どんな風に考えているのか」、それに尽きるのです。
予算もあるし、希望やこだわりもある。適度な摩擦、適度な滑りやすさ、ダンスシューズとの相性、適度なクッション性、耐久性、メンテナンス性、コンディションに質を求めるのか、ランニングコストはどのように考えるか。それらをすべてお聞きした上で、いろいろな特徴をご説明、ご提案をします。その中から最適なものを選んでもらうということです。
このダンスにはこの床!という決まりはありません。
一例を挙げてみます。
社交ダンスやサルサのように、ヒールのシューズを使うダンスであればフローリング。
K-POPやヒップホップのスタジオであれば、フローリング。
ヨガのスタジオであればスポーツシート。
スタジオ兼パーティーができるようなバー付きの踊り場や、スタジオ兼クラブであれば、踊りやすいのはもちろんですが、飲み物がこぼれたり水滴が落ちる可能性があることも考慮したほうがいいでしょう。床の痛みにくさを考えたらどちらがメンテナンスしやすいか。近隣や階下に音以外で障害になることはないか。利用者が快適にスタジオを使えて、スムーズに運営するためにはどんな床を選ぶのがベストなのか、いろいろ考える必要があります。
この記事を読んでいるあなたは、経験的に、踊るにはこの床材がいいという好みがあると思います。その床材を選ぶのが1番満足できる可能性が高いでしょう。
(それがない方は、スタジオ見学するのをおすすめします。足ざわりやグリップ性など、仕上げ材の感触を自分の足で確かめてみてください。床下地の違いで、床全体のクッション性が変わってきます。)
ただ、利用状況に合わせてもっとふさわしい床材はないか探していたり、もし興味があれば話を聞いてみる価値はあると思います。何を選ぶにせよ、自分の引き出しが増えるのは嬉しいですよね。
まとめ
ダンススタジオにとって、床は命。踊り手とともに、成功を導く重要な要素となります。トータルの価格とその価値をどう解釈するのか、スタジオづくりの目的を長期的な視点でじっくり考えて、希望をかなえられる理想のスタジオを実現しましょう。
お気軽にお問い合わせください。