冬になると、足元から冷気がじんわり伝わってきて「エアコンを強くしても床が冷たい…」と感じたことはありませんか?
特にコンクリート構造のマンションやオフィスビルでは、床下の断熱が不十分だと、いくら室内を暖めても冷気が上がってきます。
実はこの“底冷え”を防ぐ鍵となるのが、「乾式二重床」と「断熱材」の組み合わせです。
床下に空間を設ける乾式二重床は、配線や防音性能を高めるだけでなく、断熱材を活かすことで快適性を大幅に向上させることができます。
この記事では、乾式二重床に使われる断熱材の種類・施工方法・選び方を、実際の現場例を交えてわかりやすく解説します。
床下の温度をコントロールすることで、住宅でもオフィスでも“足元から快適な空間”をつくることが可能です。
乾式二重床とは?配線・断熱・防音に優れた多機能構造
乾式二重床とは、コンクリートスラブの上に支持脚(支柱)を立て、その上に床パネルを設置する構造のことです。
一般的な直貼り床とは異なり、床の下に数十センチの空間(床下空間)をつくることができます。
この空間には以下のようなメリットがあります。
- 配管設備を設置できる
- 遮音・防振・断熱など多機能な改修が可能
- 床材の交換やメンテナンスがしやすい
特に近年では、断熱性能を高めるための乾式二重床が使われるケースが多くなっています。
従来の仕様から、より“快適性を求める空間”へと用途が広がっているのです。
乾式二重床に使われる断熱材の基本構成
乾式二重床の断熱施工には、大きく分けて2つの方法があります。
- ボードに断熱材を裏打ちするタイプ
- 床下(スラブ面)に断熱材を敷き込むタイプ
どちらを採用するかは、建物の構造や目的によって変わります。
それぞれの特徴を順に見ていきましょう。
ボード一体型の断熱材:施工が早く、断熱ムラが少ない
概要
乾式二重床の「パネル」自体に断熱材が取り付けられているタイプです。
具体的には、パーティクルボード(木質チップを圧縮成形した板)の裏面に断熱材が貼り付けられている(若しくは貼り付ける)構造になっています。
このタイプは、床パネルを並べて設置するだけで断熱層も同時に形成されるため、施工スピードが早く、断熱材の敷きムラや隙間が発生しにくいのが大きなメリットです。
メリット
・床パネルと断熱材が一体化しているため施工精度が高い
・均一な断熱性能を確保できる
・工期を短縮でき、改修工事にも向いている
注意点
一体型タイプは、断熱材の厚みを後から変更することが難しく、断熱性能の調整自由度が低い点に注意が必要です。
そのため、寒冷地など断熱強化が必要な地域では、後述の「床下敷き込み型」と組み合わせて使うケースもあります。
床下に敷き込むタイプ:柔軟に断熱性能を高められる構造
概要
もうひとつの方法は、乾式二重床を設置する前にコンクリートスラブ面に断熱材を敷き込む施工です。
床下空間全体を断熱層として扱うため、底冷えの軽減効果が非常に高いのが特徴です。
特に、階下が駐車場や外気に面している部屋では、床下の温度差が大きく熱が逃げやすいため、この床下断熱が効果を発揮します。
使用される断熱材
主に使われるのはグラスウール(ガラス繊維系の綿状断熱材)です。
グラスウールは軽くて扱いやすく、コンクリート面にも密着しやすいため、床下用として非常に普及しています。
また、断熱性能は厚みを増すことで自由に調整可能です。
| 厚さ | 熱抵抗値(目安) | 使用例 |
|---|---|---|
| 50mm | 標準住宅や中間階に適用 | 一般的な断熱レベル |
| 75mm〜100mm | 寒冷地・階下が駐車場の場合 | 高断熱仕様 |
たとえば、長野県のような寒冷地域では、冬季に床下温度が氷点下近くまで下がるため、100mm前後のグラスウール断熱材を採用するケースが多く見られます。
メリット
・断熱性能を地域や用途に合わせて自由に調整できる
・底冷えや結露対策に非常に効果的
・既存の二重床にも追加施工が可能
注意点
床下断熱は、敷き込みの精度が断熱効果に直結します。
わずかな隙間からでも冷気が流入してしまうため、施工には高い技術力が必要です。
断熱材の選び方:用途・構造・地域で異なる最適解
乾式二重床に使う断熱材は、建物の構造や使用目的によって最適なものが変わります。
ここでは、新設・既設のケース別に選定ポイントを整理します。
既存の乾式二重床に断熱材を追加する場合
既に二重床がある場合は、床下に断熱材を後付けで敷き込む方法が最も一般的です。
床パネルをすべて撤去する必要がなく、部分的な改修で済むためコストを抑えられます。
このときは、グラスウールや押出法ポリスチレンフォーム(XPS)など、柔軟に施工できる素材が選ばれます。
新規で乾式二重床を設置する場合
新築や全面改修など、新しく二重床を設ける場合は、断熱材一体型パネルと床下敷き込み型のいずれかを選択できます。
| 施工タイプ | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 一体型断熱ボード | パネル裏に断熱材付き | 施工が早く仕上がりがきれい | 厚み調整が難しい |
| 床下敷き込み型 | グラスウール等をスラブ上に設置 | 断熱性能を自由に設定できる | 施工精度が求められる |
結論として、寒冷地・外気に接する床には床下断熱、
中間階・温暖地には一体型断熱パネルがおすすめです。
断熱材を入れることで得られる効果とメリット
乾式二重床に断熱材を組み合わせることで、単なる「防寒対策」にとどまらない多くのメリットが得られます。
- 冬の底冷え防止
床下に冷気が溜まるのを防ぎ、暖房効率を高めます。
室温のムラが減り、足元から快適に。 - 結露・カビの防止
床下温度が一定に保たれるため、コンクリート面との温度差が減少。
湿気によるカビや腐朽菌の発生を防ぎます。 - 光熱費の削減
断熱材が熱の逃げ道を塞ぐことで、冷暖房の効率が上がり、光熱費を年間で数万円単位で削減できる場合もあります。 - 床材の長寿命化
温度差・湿度差が小さくなることで、床材の反り・割れ・劣化が起こりにくくなります。
断熱材施工時の注意点とメンテナンス
乾式二重床の断熱施工で注意すべきは、「密閉しすぎないこと」です。
断熱性能を高めることに意識が向きすぎると、床下の通気性を失い、逆に湿気がこもってしまうリスクがあります。
そのため、床下換気口や通気スペースを適切に確保することが重要です。
また、定期的に点検口から湿気・カビ・シロアリの発生状況を確認し、必要に応じて防湿処理を追加するのが理想です。
断熱材を活かした乾式二重床で“快適と耐久”を両立する
乾式二重床における断熱材は、単なる付属部材ではありません。
建物の快適性と耐久性を左右する重要な要素です。
ボード一体型の断熱材は施工が早く、リフォームにも適しています。
一方、床下敷き込み型は断熱性能の自由度が高く、寒冷地や外気に面した床に最適です。
もし「冬場の床が冷たい」「結露が気になる」と感じたら、それは断熱性能が不足しているサインかもしれません。
私たちは、床専門の施工業者として、建物構造や用途に合わせた最適な断熱材の選定・施工を行っています。
床下の温度環境を整えることは、快適な暮らしの第一歩です。
見えない部分こそ丁寧に。
乾式二重床の断熱リフォームで、足元から心地よい空間を取り戻しましょう。




























