建物の床下構造にはさまざまなタイプがありますが、中でも「鋼製床」と「OAフロア」はよく比較される二つの工法です。どちらも金属素材を使用し、一定の空間を床下に設けるという点では共通していますが、実際には使用目的や構造、機能性が大きく異なります。
この記事では、鋼製床とOAフロアの違いを分かりやすく解説し、それぞれのメリット・デメリット、向いている用途や設置環境について、具体例を交えて紹介します。建築計画や施設整備を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
鋼製床とは?高耐久・高強度の床下地構造
鋼製床とは、鉄やアルミ合金などの金属素材を主材として構成された床下地構造です。体育館や教室、体育フロアなど、強度や安全性が求められる施設でよく使われます。
鋼製床の構造と特徴
- 主材:鉄・アルミ合金などの金属製フレーム
- 木下地の代替として設計されており、根太・大引きなどの構造を鋼製で組むことで強度を高めています。
- 優れた耐久性・耐食性
- 鋼材には防錆処理が施され、湿度や温度変化が激しい環境でも長期間にわたり安定した性能を発揮します。
- 高い不燃性
- 金属素材を使うことで火災時にも燃え広がりにくく、安全性が高い構造となっています。
→ 体育館や多目的ホールなど、人の動きが激しく、重量物の設置がある場所に適しています。
鋼製床の主な用途
- 学校や大学の体育館
- 公共のスポーツ施設
- 大型のホールや舞台下地
競技に応じて緩衝性・反撥性の調整ができる製品(例:染野製作所のジムエース)もあり、競技の種類に応じたカスタマイズが可能です。
OAフロアとは?オフィスに最適化された配線対応型床システム
OAフロア(フリーアクセスフロア)は、床下に一定の空間を設けて配線を通すことができる構造で、主にオフィス向けに設計されています。OAは”Office Automation”の略で、コンピュータ・電話・電源などの多様なケーブルを効率的に管理できるよう設計された床下システムです。
OAフロアの構造と特徴
- 床下に広い配線空間を設ける二重構造
- 支柱や架台の上にパネルを設置し、その下にLANケーブル・電源コード・電話線などを収納。
- パネルの一部を着脱できる仕様
- 配線の追加・変更が必要になっても簡単にアクセスできるため、レイアウト変更にも柔軟に対応可能です。
- 快適な歩行感を提供
- 弾力性のある表面材を使用しており、長時間歩いたり立ったりするオフィスワークでも疲れにくい設計です。
→ 配線の自由度が求められるIT系オフィスや、頻繁に席替え・機器の増設がある企業に最適です。
OAフロアの主な用途
- 一般オフィスビル
- コールセンターやデータセンター
- 会議室や研修施設
OAフロアは、建物全体の配線計画を柔軟に設計できるため、設計段階からの導入が推奨されます。
鋼製床とOAフロアの違いを比較表で整理
項目 | 鋼製床 | OAフロア |
---|---|---|
主な素材 | 鉄・アルミなどの金属 | スチールパネル+樹脂・鋼製脚など |
用途 | 体育館・ホール・文教施設 | オフィス・IT施設・会議室 |
主な機能 | 強度・緩衝性・耐久性 | 配線収納・柔軟なレイアウト変更 |
耐久性・耐食性 | 非常に高い(30年以上使用実績) | 高いが、使用頻度により変化 |
メンテナンス性 | 高耐久で手間は少ない | 配線交換・増設に対応しやすい |
不燃性 | 非常に高い | 樹脂素材使用の場合は注意が必要 |
どちらを選ぶべきか?導入シーン別おすすめ工法
鋼製床とOAフロアは、見た目や素材の一部が似ていても「目的」がまったく異なります。導入する建物の種類や用途に応じて、以下のように選び分けるのがポイントです。
鋼製床が向いているシーン
- 体育館やスポーツ施設など「人が動く」空間で衝撃や荷重に強い床が必要なとき
- 長期利用前提で耐久性・防火性・安全性を重視する施設
- 競技性能(反発・吸収性)の調整が求められる体育空間
→ 長期間にわたり安心して使用でき、保守コストも抑えられるのが魅力です。
OAフロアが向いているシーン
- IT設備や電話配線が多く、頻繁なレイアウト変更があるオフィス
- 配線を見せず、すっきりとした空間をつくりたい事業所
- 電源・LAN・セキュリティ配線などを後付け・変更する可能性が高い場合
→ 変化の多い職場環境に柔軟に対応できる床構造として重宝されています。
まとめ:鋼製床とOAフロアは「構造は似て非なる」別用途の床下地
鋼製床とOAフロアは、どちらも金属を活用した床下構造でありながら、その用途・設計思想・機能は大きく異なります。体育施設や文教施設のように“人の動きと耐久性”を重視する空間では鋼製床が、IT設備の多い“変化に強い職場”にはOAフロアが適しています。
建築コストや施工期間だけでなく、将来的な使い方まで見据えて選ぶことで、より快適で効率的な空間づくりが実現します。