壁先行工法と床先行工法
集合住宅の居室のはじめは、コンクリートスラブで囲われた何もない空間。そこから先に「間仕切り壁」を施工してから、「二重床」を施工するのを『壁先行工法』。逆に「二重床」を施工してから、「間仕切り壁」を施工するのを『床先行工法』といいます。どちらを先にするかで、それぞれにメリット・デメリットがあります。
間仕切り壁先行工法
一般的な施工工法です。LD・洋室・廊下・水周りといった居室を仕切る壁から先に施工していきます。
積算の目安
- 防振アジャスター約3.5本/㎡、根太システム約1.7m/㎡、ベースパネル約1.0枚/㎡
※部材の使用量は、居室の数や間取りによって増減しますので目安としてお考えください。
メリット
- 仕上げ材が何種類もある場合には二重床の施工高さが変わります。壁先行工法では居室ごとに区切られているので居室単位で施工を行い、出入り口部だけ段差を付ければ済んでしまいます。※B-B断面参照
- リフォームなどで床の張り替えを行う場合、壁を壊す必要がありません。
- 居室が小さいため、含水率の変化によるベースパネルや木質フロアーの伸縮の量が小さく問題化しづらいメリットがあります。
デメリット
- 間仕切り壁に挟まれた廊下などに、配管・配線が集中し二重床が施工されるまで歩行がしづらく、異業種の施工中の事故や、配管・配線の損傷などの危険があります。
- トイレ、洗面所、ウォークインクローゼットなどの狭小部が出来てしまうため、根太システムの切断やベースパネルの切断の頻度が上がり、施工ペースが低下します。
- リフォームで壁を撤去・移動する際には、床も一緒に壊して施工し直す必要があります。
間仕切り壁先行工法平面図
床先行工法
二重床を先に施工し、その上にLD・洋室・廊下・水周りといった居室を仕切る壁を載せてしまいます。壁の下には、床が沈まないようにベースパネル長手方向へ458mm間隔、短手方向へ306mm間隔に補強アジャスターを取り付けます。
積算の目安
- 防振アジャスター約4.5本/㎡、根太システム約0.7m/㎡、ベースパネル約1.0枚/㎡
※部材の使用量は、居室の数や間取りによって増減しますので目安としてお考えください。
メリット
- 配管・配線を二重床で覆ってしまうので二重床施工後の歩行が安全になり、後工程の事故のリスクが軽減します。
- 一住戸を一つの大きな居室に見立てて広面積を施工するので、根太システムの使用本数が減り、ベースパネルの切断の手間が減り、ゴミの減量、施工ペースの向上が見込めます。
デメリット
- 間仕切り壁の位置の「墨出し」を、コンクリートスラブ上と、二重床上に二度必要になります。
- 隣室と床下が繋がっているので、同じ住戸内で音や振動が伝わりやすくなってしまいます。
- 仕上げ材の厚みの違いや、床暖房の有無により二重床で段差をつける手間が発生します。※B-B断面参照
- 壁の質量で二重床が沈まないように壁下には補強アジャスターを施工する必要があり、アジャスターの使用量は増加します。※C-C断面参照
- リフォームなどで間仕切り壁を移動した場合、下階への遮音の考慮上、床下の補強アジャスターを移動する必要があります。
- 大スパンでの床先行工法では、ベースパネルと木質フロアーの伸縮により床ごと壁が動き、躯体壁との角で壁紙が切れる可能性があります。LSGや根太システムを躯体壁にビス止めするなどの配慮が必要になります。※D-D断面参照