スロープの設置は、バリアフリー対応や段差解消のために重要な工事のひとつです。
特に、置床(おきゆか)工法を採用している建物においても、スロープの設置は十分可能です。
この記事では、置床工法の基本からスロープ設置の方法、施工上の注意点、費用の目安などを詳しく解説します。
置床工法とは?スロープ設置の基礎知識
置床工法とは、鉄筋コンクリートの床スラブとは別に、防振ゴムのついた支持脚(しじきゃく)で床パネルを支える工法のことを指します。
通称「乾式二重床」とも呼ばれ、特にマンションやアパート、オフィス、店舗などで多く採用されています。
床スラブとの間に空間が生まれることで、以下のようなメリットがあります。
配管や配線が通しやすい:床下に空間があるため、水道管や電気配線を容易に通すことができます。
断熱性や遮音性が高まる:空気層ができることで、熱や音の伝わりを抑える効果があります。
水平な床を保てる:スラブ面が多少傾いていても、支持脚で床の高さを調整できるため、水平で快適な床面が実現できます。
スロープの必要性と設置目的
スロープは、バリアフリー対応の観点から非常に重要な設備です。特に以下のような場面で設置が推奨されます。
◆高齢者や車椅子の方の生活動線の確保
◆玄関や出入り口に段差がある場合
◆室内の床の高さに変化がある場合
スロープがあることで、段差を解消でき、転倒のリスクを減らし、すべての人に優しい空間をつくることが可能になります。
置床にスロープを設置する際の施工方法
置床のスロープ設置では、床の高さやスラブの形状に合わせて柔軟な設計が求められます。
基本的な施工方法は以下のとおりです。
支持脚の調整とスロープ面の形成
◆支持脚の高さを段階的に変化させることで、斜面(スロープ)を形成します。
◆勾配は建築基準法に準じて1/8以下にする必要があります。
◆傾斜面には合板やパーティクルボードをカットし、連続性のある面を形成します。
◆上に張る床材は、滑りにくい素材(防滑タイプ)を選定します。
壁際との取り合いと補強
◆壁に沿ってスロープを設ける場合は、壁際との隙間を5mm〜10mm程度確保し、伸縮や膨張に対応できるようにします。
◆長いスロープでは補強根太を設け、床面がしなるのを防ぎます。
スロープ設置の費用と施工期間の目安
スロープ設置の費用は、使用する素材や施工面積によって異なります。
おおよその費用と施工期間の目安は以下のとおりです。
費用の目安
- コンクリートスロープ(外構・玄関アプローチなど):
- 1平米あたり約2万円〜
- 幅1m×長さ5m程度のスロープで約10万円前後
- 室内用置床スロープ:
- 材料費+施工費で5万〜15万円程度
- 滑り止め素材や手すり追加で費用が上乗せされる場合があります
工期の目安
- 室内スロープ(置床):1日〜2日程度
- 外構用スロープ(コンクリート):3日〜7日程度(養生期間含む)
スロープ設置時の注意点と対策
スロープは安全性と利便性を両立するために、いくつかの注意点を押さえる必要があります。
勾配が急すぎないか確認
- 建築基準法では勾配は1/8以下(12.5%)が目安です。
- 車椅子利用者にとっては、1/12〜1/15の緩やかな勾配が理想的です。
- 勾配が急すぎると危険性が高まるため、可能な限りスペースをとって傾斜を緩やかにしましょう。
床材の滑り止め対策
- フローリング調仕上げにする場合でも、滑りにくい表面仕上げを施すか、滑り止めマットを敷くなどの対策が必要です。
- 高齢者やペットがいるご家庭では特に重要です。
まとめ:置床でもスロープ設置は可能で効果的
置床工法の建物でも、スロープの設置は問題なく可能です。正しい勾配と適切な支持構造を設けることで、快適で安全なバリアフリー空間を実現できます。
費用や設置方法について不安がある場合は、専門業者に相談し、現地調査やプランニングをしっかり行うことが成功のカギです。
スロープの設置は、暮らしの質を大きく向上させるだけでなく、将来の安全性にもつながります。
検討中の方は、早めに専門家に相談してみましょう。