リビングの光が映り込まなくなった黒ずんだ床。
イスを引くたび増える浅い白筋やペットの引っかき跡。
掃除をしても隠し切れまだらになった汚れが「貼り替えなきゃいけないのか…」とため息を誘いますよね。
そんな時に伝えたいリフォーム方法が再塗装という選択肢。
表面を一度リセットして塗り直すだけで、見た目も表面加工も“ほぼ新築”に戻せる方法です。
本記事では気になるフローリング再塗装費用のすべてを解説します。
読み終わるころには、あなたの床がどのくらいのコストで蘇るか、はっきりイメージできるはずです。
フローリング再塗装とは何か
フローリング再塗装は、既存の床材を剝がさず無垢床研磨機で薄く研磨し、古い塗膜・汚れ・細かな傷を除去してから新しい塗料を塗り直す再生工法です。
無垢材なら木目が深く鮮明になり、突き板フローリングでも染み抜き効果が期待できます。
張り替えと比べると工期が短く廃材もほぼゼロ。
環境負荷と費用を抑えながら、木本来の質感と耐久膜を同時に取り戻せるのが大きな魅力です。
再塗装に向く床・向かない床
ただ、再塗装は万能ではありません。
表面単板が薄い突き板(0.2 mm以下)や塩ビ・クッションフロアは研磨で基材が露出したり、塗膜が密着しにくかったりするため適しません。
一方、無垢フローリング、厚突き板(0.6 mm以上)のフローリングは再塗装との相性が抜群。
一つひとつの施設の使い方や要望に応じて塗料選定するため、契約前に板厚・樹種・熱源を確認しておくと安心です。
フローリング再塗装費用の内訳
再塗装費用は大きく「諸経費」と「施工費」で構成されます。
相場の幅が1㎡あたり1,500円〜20,000円と大きいのは、塗料グレードと床の状況が千差万別だからです。
以下で詳しく見ていきましょう。
材料費の相場と特徴
塗料の種類 | 材料費目安 (円/㎡) | 耐久年数 (目安) | におい・VOC | 仕上がりの質感 | 主な用途例 |
---|---|---|---|---|---|
自然塗料 (亜麻仁油・蜜ろうなど) | 1,500〜3,000 | 3〜5年 | 少ない | しっとりマット、木目強調 | 子ども部屋、無垢材重視住宅 |
水性ウレタン | 4,000〜6,000 | 5〜8年 | 低い | 半ツヤ〜ツヤ消し、滑りにくい | 居室全般、床暖房対応 |
溶剤ウレタン | 5,000〜8,000 | 7〜10年 | 中程度 | 高ツヤ、硬質 | 店舗、ペット同居世帯 |
UV硬化塗装 | 8,000〜20,000 | 10年以上 | ほぼ無臭 | ガラス質で超硬度 | 商業施設など |
※耐久年数はメンテナンス頻度、歩行量で変動
施工費の決まり方
施工費は研磨の手間と塗布回数・乾燥養生で変動します。
目安は1㎡あたり4,000〜20,000円。差が開く主な要因は次の6つです。
- 床の傷み具合
深い凹みやささくれは粗研磨を数段階追加するため工数増。 - 面積と家具移動の有無・養生
大面積でも室内が空なら機械効率が上がり単価が下がることも。
また、移動できない什器などは数が多いと手間や時間が掛かり養生費用が発生します。 - 塗料の乾燥時間
自然塗料は塗り重ね前に24時間以上置く場合があり、養生日数が多いほど人件費がかさみます。 - 高機能塗装の下処理
UV塗装や超耐久ウレタンは下塗り専用プライマーが必須で手数が増えます。 - 施工環境
高層マンションの搬入制限、夜間作業など特殊条件は割増が付くことも。 - 諸経費
事務書類作成に掛かる費用、また交通費や運搬荷揚費など、工事において必要となる経費。
DIYと業者依頼の費用差
比較項目 | DIY | 業者依頼 |
---|---|---|
必要コスト | 材料費と工具レンタル (約3,000〜6,000円/㎡) | 材料費と施工費 (約5,500〜25,000円/㎡) |
仕上がり | 塗りムラ・研磨ムラのリスク大 | プロ品質・保証付き |
時間 | 休日が丸ごと数回潰れる可能性 | 2〜5日で完了 |
トラブル対応 | すべて自己責任 | アフターサービスあり |
DIY最大の落とし穴は研磨深度のコントロール。
均一に削るには専用ドラムサンダーと熟練度が不可欠です。
とくに突き板は削り過ぎると芯材が露出し、貼り替えしか手がなくなるため注意しましょう。
追加費用が発生しやすいケース
再塗装見積もりで見落としがちな「プラスα」は次の通りです。
- 巾木・敷居との段差調整
床厚が0.5 mm減ると隙間が生じることがあるため、コーキング充填や巾木交換で5,000〜10,000円増。 - 部分的な床板交換
腐食や大きな割れがあれば1枚張り替えが必要で、1箇所7,000〜15,000円ほど追加。 - 家具保管・移動費
ピアノや大型水槽など重量物は外部業者手配が必要で、1台2万円前後かかる例も。
面積別・塗料別の概算早見表
床面積 | 自然塗料仕上げ | 水性ウレタン仕上げ | UV塗装仕上げ |
---|---|---|---|
10畳 (約16.5㎡) | 13万〜18万円 | 20万〜28万円 | 35万〜50万円 |
20畳 (約33㎡) | 25万〜34万円 | 38万〜55万円 | 70万〜95万円 |
100㎡体育館一角 | 45万〜60万円 | 65万〜85万円 | 120万〜180万円 |
※家具移動・下地補修なし、標準乾燥環境を想定
見積もり比較で注目すべき三つの数字
- 研磨深度 (mm)
無垢なら0.3〜1mm、突き板なら0.3mm~が一般的。
深すぎると寿命を縮めるため要確認。 - 塗布回数と膜厚
ウレタンであれば3回塗り・オイルであれば2回塗りも。
膜厚は塗料によって違うが適正量が性能発揮の目安。 - 集塵率 (%)
サンディング機の中には95%以上粉じんを回収するものも。
ただ、面積が広い場所でのダストフリーサンディングを選択すると研磨コストが却って高額になる恐れが。
養生や清掃費に直結するため比較ポイントになります。
実例で見る再塗装ビフォーアフター
長野県の築25年戸建て(カバ無垢15 mm)では、黒ずみと日焼けでグレーがかった床を再塗装。
粗研磨→中研磨→仕上げ研磨の3工程で削り、水性ウレタン3回塗布。
費用は31万円 (18畳)/工期4日。
施工前に比べ圧倒的に明るくなり、意識してきれいに使うようになったとオーナー様も満足。
山梨県のペンション(カバ無垢15 mm)元サウナ室を部屋にして再利用したい。
粗研磨→中研磨→仕上げ研磨、ポリッシャー研磨の4工程で削り、水性ウレタン3回塗布。
費用は30万円 (40㎡)/工期5日。
黒ずみが酷く塗膜は完全に無い状態だったが、研磨塗装で再生。
神奈川県の幼稚園(杉無垢15 mm)摩耗してすり減った所と、すり減らない箇所とで斑模様になった床を再塗装。
粗研磨→中研磨→仕上げ研磨、ポリッシャー研磨の4工程で削り、水性ウレタン3回塗布。
費用は70万円 (150㎡)/工期6日。
ささくれがなくなり、安全安心な床になったと園長先生。メンテナンスにも興味を示していただけた。
費用を抑えながら満足度を上げるコツ
- 家具を事前に片付けておく
業者の搬出入時間を短縮し、1〜2万円の移動費を節約。 - 暖かく乾燥しやすい季節に合わせて依頼
4月~5月、9月~10月は他の季節に比べ湿度と気温がよく養生時間が短くなり工期短縮、人件費圧縮に。 - 同時に巾木塗装や建具調整を頼む
足を運ぶ回数が増えないため、単独で依頼するより割安になることが多い。
再塗装で“資産価値と暮らし心地”を同時に守ろう
貼り替えの約半額、廃材ほぼゼロ、工期最短3日(大きさにもよる)でフローリング再塗装は、美観回復と家計・環境への配慮を両立するスマートなリフォーム方法といえます。
材料費と施工費の内訳を把握し、床材の適性を確かめたうえで見積もりを取れば、予算に合った最適プランが見えてきます。
もしあなたの床が「もう限界かも」とささやいているなら、貼り替えを決断する前にぜひ再塗装を検討してみてください。蘇った木の温もりが、暮らしの”あの時の心””あの頃の感覚”を感じさせてくれるかもしれません。