「ショールームで見たフローリング、どれも素敵で迷う…」
「でも安いのはシートフローリング?それとも挽き板?何が違うの?」
そう思ったこと、ありませんか?
複合フローリングには表面素材(表層)の違いで大きく3つの種類があり、それぞれ価格、質感、耐久性に大きな差があります。
この記事では、それぞれの表層タイプの違いや特徴、選び方のポイントをわかりやすく解説していきます。
複合フローリングとは?まずは構造の基本をチェック
合板やMDFなどの「基材」の上に仕上げ材を貼る構造
複合フローリングは、木材チップや合板などを圧縮して作られた「基材(芯材)」の上に、木の板や化粧シートなどを貼り付けて仕上げたフローリング材です。
【1】基材(芯材)とは?
複合フローリングの“芯”となる部分には、主に「合板」や「MDF(中密度繊維板)」といった工業製品の木質材料が使われています。
合板(ごうはん)とは?
合板は、薄くスライスした木材を繊維方向が交差するように何層も貼り重ねた板材です。
まるで、木の繊維が縦横に手を取り合って支え合っているような構造。
このつくりによって、湿気や気温の変化による“反り”や“ねじれ”に強く、寸法安定性に優れているのが大きな魅力です。
また、構造的な強さがあるため、重量のかかる場所や床暖房対応フローリングの下地としても非常に相性が良いです。
MDF(中密度繊維板)とは?
MDFは、木材を粉状にしてから接着剤とともに高圧で圧縮して成形された板材です。
見た目は一枚のしっかりとした板ですが、中身は細かな木の繊維がギュッと凝縮されていて、比重が高く、硬くて滑らかな表面を持つのが特長。特に、木目柄のシートや突き板を貼る下地として最適で、細かな模様もきれいに映えます。
そのため、デザイン性を重視するインテリアや、建具・家具向けのフローリングにも多く使われています。
これらの素材は、マンションや床暖房との相性も良好です。
【2】表層(仕上げ材)とは?
基材の上に貼られる表面材は、住まいの雰囲気を決める最も目につく部分。以下の2タイプに大別されます。
天然木突き板タイプ
0.3〜2mm程度の天然木をスライスした「突き板」を貼り付けたもの。
◆天然木ならではの風合いや経年変化を楽しみたい方におすすめ。
◆一見すると無垢材のように見えるため、高級感があります。
化粧シートタイプ
木目を印刷したプリントシートを貼り付けたもの。
◆価格が抑えられ、傷や水に強いため、キッチンや子育て世帯に人気。
◆最近ではリアルな質感のハイグレードシートも登場しており、見た目での違いはほとんど分からないことも。
この「表層」の違いが、質感や価格、メンテナンス性に大きく影響するポイントです。
表層の違いで分かれる3タイプの複合フローリング
種類 | 表面素材 | 厚み(目安) | 質感 | 耐久性 | 価格帯 |
---|---|---|---|---|---|
挽き板フローリング | 鋸で切り出した天然木 | 2〜5mm | 無垢材に近く高級感 | ◎ | 高価 |
突き板フローリング | 木材をスライス | 0.2〜0.6mm | 天然木の質感あり | ○ | 中価格帯 |
シートフローリング | プリント化粧シート | 0.1〜0.3mm | デザイン性は自由 | △ | 低価格 |
【タイプ別】複合フローリングの表層ごとの特徴
挽き板フローリングの特徴とメリット
天然木を鋸で切り出した板を表面に使用しており、木目や風合いに深みがあり、無垢材にかなり近い高級感が得られます。
再塗装や研磨が可能な厚み
表面材の厚みが2mm〜5mmほどあるため、無垢材と同じように軽いサンディング(研磨)や再塗装が可能です。
暮らしの中で小キズが付いたとしても、表面を整えることで美しさをよみがえらせることができます。
これは、長く愛着を持って使い続けたい方にとって大きなメリットです。
“本物”の木目と手触り
挽き板は、合成シートや突板では再現できない木の凹凸・節・色ムラなど、自然素材ならではの個性をそのまま活かせるのが特長です。
素足で触れると、“スッと足裏になじむやわらかさ”と“自然のぬくもり”を感じられ、心地よさのレベルが一段階上がります。
高い耐久性と安心感
挽き板は合板などの安定した下地の上に天然木を貼り合わせているため、寸法安定性にも優れ、無垢材よりも反りや割れが起きにくい構造です。
そのため、床暖房対応や湿気の多い地域でも比較的安心して使えるのもポイント。
長期間にわたって、美しさと強さの両立が可能です。
挽き板フローリングのデメリット
比較的価格が高い
挽き板フローリングは、表面に本物の天然木を使用しているため、一般的なシートフローリングより価格帯は高めです。
製造工程に手間がかかることや、素材そのものの質が高いこともあり、1㎡あたり1.5〜2万円前後の製品も珍しくありません。
✅ポイント
「床を単なる『歩く場所』ではなく、住まいの『表情』と捉える方にとっては、決して無駄なコストではありません。
とはいえ、施工面積や全体予算とのバランスは慎重に検討する必要があります。」
湿気の影響を受けやすい(基材が吸湿する可能性)
表面は天然木の挽き板ですが、下地となる基材(合板やMDFなど)は湿気に弱い素材である場合も多く、湿気の多い場所での使用には注意が必要です。
特に水回り(脱衣所・キッチン)や結露しやすい窓周りに近い床面には、床下の通気や除湿対策もセットで検討しましょう。
✅ポイント
「施工場所によっては、床材そのものよりも『湿気対策』が品質を左右します。設計段階から断熱・換気計画とセットで考えることをおすすめします。」
突き板フローリングの特徴とメリット
突き板とは、天然木を0.2~0.6mmほどの薄さにスライスしたもの。天然木の質感を保ちつつ、コストを抑えられるのが特長です。
無垢の木目を楽しめる
突き板フローリングの一番の魅力は、本物の天然木を使用していること。
0.2〜0.6mmという薄さながら、木が持つ独特の木目や色合い、節や年輪などの風合いをしっかり感じられます。
✅ポイント
「表面だけを見ると、無垢材とほとんど見分けがつかない製品も多く、見た目の“木らしさ”を求めるお客様にも好評です。」
挽き板よりは安価で導入しやすい
突き板は、挽き板や無垢フローリングと比べて価格を抑えられるのが大きなメリット。
「天然木の質感を大切にしたいけど、コストは現実的に抑えたい」という方に最適です。
リビングや寝室などの広い面積にも使いやすく、高級感と予算のバランスが取りやすい選択肢といえます。
軽量で施工性が高い
基材は合板などの工業製品のため、反りや収縮に強く、軽量で扱いやすいのもポイント。
リフォーム現場でもよく使用されており、スピーディーに、安定した仕上がりが得られます。
✅ポイント
「例えばマンションのリノベや、床暖房対応の床材を探している方にも◎。表面は天然木なのに、下地はしっかりしているので“扱いやすさと見た目の良さ”の両立が可能です。」
突き板フローリングのデメリット
表面が非常に薄いため、研磨による再生はできない
突き板フローリングの表面材は、おおよそ0.2~0.6mm程度の極薄の天然木で構成されています。
そのため、長年使って傷んだ場合でも、無垢材や挽き板のように「削って再塗装する」ことができません。
✅ポイント
「“将来また表面を削ってリフレッシュしたい”という場合は、突き板より挽き板や無垢材を選ぶのが安心です。」
傷や摩耗に対してやや繊細
突き板は、表面の木質が薄いため、重い家具の引きずりや鋭利な物の落下には注意が必要です。
摩擦や圧力により、下地の基材が露出してしまう恐れがあります。
✅こんな対策を
・家具の脚にはフェルトなどを装着する
・キャスター付き家具には下敷きマットを使用する
・玄関やダイニングなど、人の出入りが多い場所には注意して選定する
シートフローリングの特徴とメリット
木目や石目を印刷したシートを貼ったタイプで、デザインの自由度が高く、低価格であることが魅力です。
水・汚れに強く、お手入れが簡単
シートフローリングは、特殊な化粧シートを表面に貼り付けた床材です。シート表面にはウレタンや樹脂コーティングが施されており、水や汚れが染み込まず、サッと拭くだけで清潔を保てます。
✅こんな場所におすすめ
・キッチンや洗面所などの水まわり
・ペットがいるご家庭
・子どもの食べこぼしや落書き対策に
柄・色のバリエーションが豊富で空間演出がしやすい
天然木そっくりの木目調から、石目・コンクリート調・北欧風の淡いカラーまで、デザインの選択肢が非常に多いのが魅力。
お部屋のテイストや家具に合わせて、統一感のある空間づくりが可能です。
✅たとえば
・ナチュラルなオーク調で優しいリビング
・石目柄でホテルライクな洗面室
・ホワイト調で北欧風の明るいダイニングに
床暖房対応タイプもあり、冷え対策もOK
近年では、床暖房に対応したシートフローリングも多数登場しています。
熱に強く、変形や剥がれが起きにくい設計のため、冬でも足元からぽかぽか快適に。
✅冷える季節に嬉しい
シート材の薄さゆえに、熱伝導率が良く暖かさがダイレクトに伝わりやすいのも利点です。
シートフローリングのデメリット
本物の木と比べると質感に差が出る
シートフローリングは、木目や石目の柄を印刷シートで再現しているため、どうしても本物の天然木のような“質感の深み”や“手触りの温もり”には劣ります。
特に、自然素材にこだわりたい方や、質感を重視したい高級志向の空間では、やや人工的に見えてしまうケースもあります。
✅例
「木の節や年輪の凹凸が好き」という方には、突き板や無垢材のほうが満足度が高くなります。
深いキズがつくと補修が難しい
表面の化粧シートが薄いため、重い家具を引きずったり、鋭利なもので傷つけたりすると、下の基材が露出してしまうことがあります。
このような深い傷は目立ちやすく、部分補修が難しいため、張り替えが必要になるケースも少なくありません。
✅注意点
・キャスター付き椅子やペットの爪などでも傷がつきやすい
・補修ペンやパテでの対応は色が合いづらく、目立ちやすい
表層の違いはどう見分ける?木口(こぐち)をチェック
複合フローリングか無垢フローリングか、またその種類を見分けるには「木口(こぐち)」つまり断面を見れば一目瞭然、一番確実です。
複合フローリングの場合
複合フローリングは、「基材(芯材)+表面材」という層構造になっています。
断面を確認すると、表面にだけ薄い木材やシートが貼られ、内部は合板やMDFなどの異なる素材で構成されているのが特徴です。
✅見た目のポイント
・層が横に何層も重なって見える
・上層の表面材が薄く、下に芯材(ベージュ〜茶色の合板やMDF)がある
・表層だけ木目、断面は異素材(プリントや板目が出ていない)
無垢フローリングの場合
無垢フローリングは、一本の木から切り出した天然木100%の材料です。
そのため、断面のどこを見ても、同じ木目・同じ素材で構成されています。
✅見た目のポイント
・切り口の断面にも木目が続いている
・上から下まで一体の木の繊維
・木の香りや自然な油分、節なども表面と変わらず確認できる
実際に見比べるには?
施工中の現場やカットサンプルで断面を横から見ると一目で違いが分かります。
ショールームなどでも、「無垢と複合のサンプル断面」を比べて見ると理解が早まります。
複合フローリングの選び方と活用ポイント
選ぶときの判断基準
ライフスタイルやご予算に合わせて、最適な床材を選びましょう。
価格重視なら【シートフローリング】
「コストを抑えて、お部屋全体の雰囲気を変えたい」
そんな方におすすめなのがシートフローリングです。
表面には木目調や石目調のプリントシートが施されており、価格帯もリーズナブル。
さらに、水や汚れにも強く、お手入れもラクなので、子育て世代や賃貸物件のリフォームにも多く採用されています。
✅おすすめの方:
・とにかく費用を抑えたい
・短期的に模様替えを楽しみたい
・汚れやすい空間(脱衣所・キッチン)にも使いたい
質感と見た目を重視するなら【突き板 or 挽き板フローリング】
「天然木のような見た目が欲しい」「インテリアにもこだわりたい」
そんな方には、突き板や挽き板のフローリングがおすすめです。
-
突き板:木の質感を活かしながらも、価格は抑えめ。施工もしやすく、デザインも豊富。
-
挽き板:0.5~2mm程度の厚みのある天然木を使用しており、より高級感と耐久性がアップ。
✅おすすめの方:
・リビングや寝室など、居心地の良さを重視したい
・ナチュラルな木の表情を楽しみたい
・質感と実用性をバランスよく取り入れたい
長く使いたい・高級感を求めるなら【挽き板フローリング】
「一度リフォームしたら、10年、20年と長く使いたい」
「本物志向で、見た目も手触りも妥協したくない」
そんな方に最も適しているのが、挽き板フローリングです。
天然木をそのまま削り出して貼り付けた厚みのある表層は、経年変化を楽しめるだけでなく、再研磨や再塗装も可能。
ホテルライクな空間や高級注文住宅にもよく採用されるグレードです。
✅おすすめの方:
・長期的なメンテナンスを見越して選びたい
・住宅の資産価値を高めたい
・来客の多い空間やこだわりの部屋に使いたい
使用場所での使い分け例
部屋・用途 | おすすめタイプ | 理由 |
リビング・玄関 | 挽き板 or 突き板 | 来客が多く、デザイン性と耐久性が求められる |
子ども部屋・寝室 | シート or 突き板 | コスパ重視。掃除のしやすさもポイント |
キッチン・洗面所 | シートフローリング | 汚れや水に強く、日々の手入れが簡単 |
複合フローリングは「表層」で大きく変わる!
複合フローリングは、挽き板・突き板・シートという3つの表層タイプによって、見た目、価格、性能が大きく異なります。
後悔しないためには、「どんな部屋で、どのくらいの期間使いたいか」を明確にし、その用途に合ったタイプを選ぶことが重要です。
天然木の風合いを重視するなら挽き板、コストとバランス重視なら突き板、掃除やメンテナンス重視ならシートがおすすめです。